砂漠の中に突如現れるアートの山「サルベーション・マウンテン」

砂漠の中に突如現れるアートの山「サルベーション・マウンテン」

カリフォルニア州のロサンゼルスよりもさらに南、メキシコとの国境にほど近い砂漠地帯に突如現れるカラフルな山。最近、日本でもファッション雑誌やミュージックビデオなどで認知度を上げているこの色とりどりの鮮やかな山は、「サルベーション・マウンテン(Salvation Mountain)」と呼ばれるアート作品だ。

作者はレオナード・ナイト(Leonard Knight)という男性。彼はこのアート作品を、およそ30年かけて完成させたという。サルベーション・マウンテンのテーマは“God is Love(神は愛)”だ。作品のあちこちには“Jesus(ジーザス)”や“Love(愛)”“Bible(聖書)”など、キリスト教に関連のあるワードが刻まれている。

キリスト教に関連するワードがそこかしこに

レオナードがキリスト教に熱心になったのは、35歳の時だった。彼は「God is Love」というメッセージを多くの人々に広げたいとの気持ちから、メッセージを描いた大きな気球を飛ばす方法を思いつく。しかし、気球制作を始めたもののなかなかうまくいかなかった。

そんな時に彼は、南カリフォルニアのスラブ・シティ(Slab City)のそばにある砂漠を訪れた。この場所が気に入ったレオナードはここでも気球を飛ばすことを試みたが、やはりうまくいかない。気球作戦は諦めたものの、胸の中でくすぶる熱意を捨てることができなかった彼は、この地を離れる前にもう1週間滞在し、少量のセメントを使って小さなモニュメントを作ろうと決心した。

実際に作り始めると、一つ作り終えたらもう一つ、もう一つ作り終えたらまた一つと、セメントを買い足しては作品をペイントしていき、モニュメント作りに没頭した。残り1週間の滞在予定が数週間、1年とどんどん延び、それと並行して作品もどんどんと大きくなっていく。そうしていつしか、彼のモニュメントは小高い山へと変貌を遂げていったのだ。

制作から4年ほど経った頃、セメントでは脆く崩れやすいことに気がついたレオナードは粘土や藁などを混ぜ合わせた素材でモニュメントの補強を始める。こうしてさまざまな試行錯誤を繰り返しては根気強くモニュメントを補強して、数十年かけて現在の形ができあがったのだ。

作品が佇むエリアへは、州道111号から狭い道路へと入り、しばらく進むとたどり着く。入り口にはカラフルな色彩で「Salvation Mountain」と書かれた看板が立っているのですぐに分かるだろう。

小高い山のてっぺんには十字架が立ち、そのすぐ下の斜面には赤い大きな文字で「God is Love」のワードが見える。周りには色とりどりの花や木、小鳥などの絵が描かれているほか、キリスト教への熱意をこめた単語や聖書の1節などもペイントされている。黄色でペイントされた道は歩いていいスペースとなっており、この山を登って頂上の十字架のそばまで行くこともできる。

ここまで作品の中を登ることができる

山の隣には洞窟のように見える小さな建物があり、中に入ると迷路のように四方へと通路が連なっている。内部もカラフルにペイントされており、見上げると木の枝が組み上げられたような骨組みが見え、まるで隠れ家にでもいるようなワクワクした気分になれる。すぐ隣には礼拝堂のような洞穴もあり、内部には写真や彫刻など、神への捧げ物と思われるものが壁中にはめ込まれている。

山の隣にはカラフルな洞窟が
礼拝堂のような洞穴の壁には、写真や小さな像などがびっしり

また、サルベーション・マウンテンの周囲にポツリポツリと止められたいくつかの古い車やトラックなども、ペイントが施されてアート作品の一部となっている。ガラクタのように見えても、実は大事な作品の一つだったりするのでなかなか興味深い。

周りに点在する車もアート作品のひとつ

サルベーション・マウンテンを見たら、すぐ裏側にある小さな町、スラブ・シティへも足を運んでみよう。ここは第二次世界大戦中に海軍のキャンプ地として使用されていた町。現在は更地となっており、ガスも電気も水道も通っていない砂漠地帯だが、1960年代ごろからキャンピングカーで気ままに暮らすヒッピーなどの人々が集まり出したと言われている。税金を払う必要のない、フリータウンといったところだ。

この町とは言いきれないエリア内には、一見ガラクタのように見えるアート作品があちこちに散らばっている。住人はフレンドリーで「気楽に見ていって」といった感じなので、散策してみるのもいいだろう。日本では見ることのできない、独特な世界が広がっている。ちなみに道端でレモネードなどを売る屋台などもあるが、筆者は挑戦したことがない。食の安全面に関しては、正直疑問が残る。

スラブ・シティの奥には「イースト・ジーザス(East Jesus)」と呼ばれるスポットがある。ここも、ガラクタなどを使った不思議な作品が集うアートスポットだ。入り口には「Donation」と書かれたボックスがあるので、気持ちだけお金を落として中を見学しよう。

打ち捨てられた空き缶やビン、車の部品などが不規則に転がっているのかと思いきや、実は意図的に配置されたものだったり、マネキンが天井から吊るされた不気味な車があったりと、すべての作品がなかなかユニークだ。現在も作品の制作活動が続けられており、変化し続ける不思議な町といった風情。

ちょっと不気味なアート作品も
『オズの魔法使い』を思わせる壊れた家

人里から離れた独特なアートスポットであるサルベーション・マウンテン。アクセスが不便にも関わらず、その印象的な風景とかわいらしさから、クリスチャンのみならず世界各国からの観光客を引きつける、一大スポットとなっていることは間違いない。

Salvation Mountain
CA-111からNilandでMain Streetへ進み、そのままBeal Roadを車で約2.3マイル。