アメリカに染まってしまったと感じる瞬間
- 2022.02.03
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
アメリカで生活を始めてもうすぐ5年となる。
ここまで来ると、もう慣れたものだ。アメリカらしいレイジーな労働者たちも許容できるようになったし、ちょっとやそっとでは動じなくなった。
それと同時に、私もどんどんアメリカナイズされていることをひしひしと感じる。
あるアメリカ人の友人はスムージーが大好きで、毎日のようにスムージーを買って飲んでいる。先日、その友人と一緒に過ごしていた時に「スムージーを買いに行こう」と誘われた。私は普段スムージーをほとんど飲まない類の人間なのだが、たまには良いだろうと思いついて行くことにした。店内に入りメニューを見てみると、実に多種多様なスムージーがある。
ここで日本人諸君に問いかけたい。
スムージーといえば、王道はどんなものだろう。ベリー系や柑橘系などのフルーツが入ったスムージーや、野菜が入った健康的なスムージーではないだろうか。筆者ももちろんスムージーといえばフルーツだよな、という感覚で、さっぱり系のフルーツを使ったものを頼もうと思っていた。
一方、友人から一押しだとすすめられたのが、ピーナッツバターが入っているスムージーだ。
はいはい、Stupid Americanが好みそうな濃厚でしつこそうなやつね。
と私は思った。日本人諸君ならこの気持ちを理解していただけるのではないだろうか。
普段ならば絶対に頼まないメニューなのだが、満面の笑みで「これが1番おいしいから!」と誘ってくる友人に対して断る申し訳なさが優ってしまった私は、そのおすすめとやらを試してみることにした。
私が頼んだのは、ピーナッツバターに加えてバナナ、シナモン、ハニー、フローズンヨーグルト、コーヒーが入ったスムージー。ちなみに言い訳ではないがマルチビタミンとプロテインも入っており、気休め程度には健康に良いメニューである。
待つこと5分ほどでスムージーが出てきた。
対峙したスムージーを上下左右、四方八方から観察してみたが、どう見てもいかにもアメリカらしい胃もたれしそうなスムージーだ。
私は勇気を振り絞り、我が身を犠牲にする勢いで一口飲んでみた。
ごくり。
………ほう。
……悪くないじゃないか。
そこからは磁石でもついているのかというくらいストローから離れられずひたすら飲み続け、20分ほどで飲み干してしまった。
お分かりだろうか。
ピーナッツバターのスムージーは美味だったのだ。
それからというもの、ふとした時に体がスムージーを欲するようになった。そんな時、私は吸い込まれるようにスムージー屋さんに入り、ピーナッツバターのスムージーを注文するのである。
こういった、食わず飲まず嫌いでなんとなく手をつけていなかったものが実はおいしいというミラクルが、アメリカではしょっちゅうある。
スウィートグリーンティーもその一つだ。アメリカではスターバックスやカフェに行くと、レモネードやピーチ、ハニーなどをブレンドした甘いグリーンティーのメニューをよく見る。緑茶の本場を知る日本人からすれば、甘い緑茶など邪道中の邪道だ。
私はずっと思っていた。
なぜStupid Americanはすべてのものを甘くしたがるのか、と。
スウィートなグリーンティーなど絶対に手を出してやるものかと心に決めていたのだが、その決意もいつの間にやらベルリンの壁のようにガラガラと崩れ去っていた。ある日、さっぱりしたものが飲みたい気分だった私はメニューをざっと見て、いたずら心からグリーンティーレモネードを注文してみた。飲んでみると、意外にもおいしいではないか。それからはスウィートなグリーンティーもちょくちょく飲むようになった。
長くアメリカに住んでいると、日本ではあり得ないと思っていたものにも慣れてくる。
そうして少しずつ、人はアメリカナイズされていくのだ。
ちなみに、これはいけない、と思ったアメリカナイズエピソードも一つ披露しておこう。
我が家の近所には大きなショッピングモールがあるのだが、これがすこぶる大きい。端から端まで歩くのも大変だが、さらに道が枝分かれして広がっているので、すべて見て回るとなると歩きがいがある。
このショッピングモール、最初の頃はすべて徒歩で移動していたのだが、ある時から面倒臭くなった私は車移動という手段を取るようになった。あるエントランスから入って付近のお店で買い物を済ませたら外に出て、車に乗って別のエントランスまで移動するのである。
これをやり始めると、もう歯止めが効かない。
どんなに短い距離でも車で移動するようになってしまった。
車移動はとても楽だが、気をつけないとまったく運動しない生活になってしまう。運動を敬遠するようになったら最後、肥満ライフの道へとまっしぐらだ。
まだ日本人としてのアイデンティティと誇りを持っている私には、そこまで落ちぶれることは許されない。
これ以上レイジーな人間にならないよう、自分を戒めていかなければならない。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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