島根県・出雲からめぐる神話のふるさと

島根県・出雲からめぐる神話のふるさと

島根県の中東部、日本海に面した出雲市は、『古事記』『日本書紀』『出雲國風土記』など古くから伝わる日本の神話に登場する、歴史深い土地。日本全国から神々が集まる出雲大社は縁結びの神社としても知られることから、出雲エリアは「神話の国」や「縁結びの国」などさまざまな異名を持つ。

そんな出雲をはじめとする周辺地域には、日本の国づくりに関わる重要なスポットが数多く点在している。神話スポットや歴史的史跡のほか、伝統文化やグルメなど、魅力がたっぷり詰まった日本人のふるさとを感じられる観光スポットを紹介していく。

 

八百万の神が集う、出雲大社


出雲に来たら絶対に外せないのが、出雲大社。神話の国・出雲を象徴するこの神社は、日本最古の歴史書ともいわれる『古事記』にもその創建が記されているほどの古刹だ。主祭神は大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)。この地で国づくりを行なったオオクニヌシノオオカミが、高天原に住むアマテラスオオミカミに国を譲った(神話「国譲り」)際に造営された天日隅宮(あめのひすみのみや)が、現在の出雲大社ともいわれている。

男女の出会いだけでなく、人と人とのご縁を結んでくれる縁結びの神としても名高い出雲大社には、旧暦の10月に全国の八百万の神々が集まる。その間、ほかの土地では神が留守になるため「神無月」とされるが、出雲では神が集まるため「神在月」と呼ばれる。神在月には出雲大社で伝統的な神事が行なわれ、この期間は観光客も多く訪れるという。

敷地内には樹齢数百年の立派な松並木や歴史を感じさせる荘厳な社殿、神楽殿で見られる日本最大級の注連縄、神在月に集まった神々の宿舎である十九柱など、興味深い建築物があちこちに見られる。撫でれば子宝に恵まれるといわれる銅製の神馬神牛像は、多くの人々に撫でられた顔の部分のみ茶色くピカピカに輝いていることが分かるだろう。

神前でのお参りは出雲大社独特の作法があるので、神様へのご挨拶の前にマナーをきちんと学んでおこう。

 

神門通りで地元のみやげ物探し


出雲大社前駅舎は国登録文化財

出雲大社の正面にまっすぐ伸びる参道「神門通り」は、下町風情が漂う門前町。昔ながらの瓦屋根や平屋造りの建物が軒を連ね、タイムスリップしたような気分に浸れる町並みだ。最近は新たな観光スポットもオープンしており、訪れるたびに新しい顔を見せてくれる。

門前町らしいメノウの専門店や、出雲の神話にゆかりのあるものをモチーフにしたかわいらしい雑貨店のほか、伝統の味を守り続ける和菓子店など、気になるお店が左右に並ぶ。ここで味わってもらいたいのが、日本おなじみのスイーツ「ぜんざい」。実は出雲がその発祥の地ともいわれており、神門通りにはおいしいぜんざいを提供する「日本ぜんざい学会壱号店」もある。

 

コシのある食べごたえ「出雲そば」を味わう


出雲の郷土料理といえば、出雲そばだ。殻の付いたソバの実をそのまま製粉しているため少し黒っぽいのが特徴で、香りが良く独特の風味がある。食べ方はいくつかパターンがあるが、1番有名なのが「割子そば」。3段の丸い器にそれぞれそばが入っている。まずは一番上の器にお好みの薬味をのせてそばつゆをかけて食べ、残ったつゆを2段目のそばにかけて食べ……というような形で上から順番に食べていく。

最後にはそば湯もお忘れなく。出雲周辺には数え切れないほどのそば店があり、それぞれの店でこだわりのそばやつゆを提供している。何店舗かハシゴして、食べ比べてみるのもいいだろう。

 

日本の夕日百選にも選ばれている宍道(しんじ)湖


出雲市駅から山陰本線で東へ進むと、進行方向に向かって左側に大きな湖が見えてくる。周囲約45キロの宍道湖は、日本屈指の大きな湖だ。塩分をわずかに含む汽水湖で、シジミやシラウオなどの生産が盛んだ。これらの魚介類は宍道湖七珍としても知られる。

この宍道湖で人気なのが、夕日鑑賞。茜色の夕日が湖面に反射し、一面が真っ赤に染まる光景は息を呑むほどの美しさ。湖の中ほどにぽっかりと浮かぶ嫁ヶ島のシルエットが真っ赤な世界に一点浮かび上がり、この感動的な風景は「日本の夕日百選」にも選ばれるほどだ。

宍道湖では観光遊覧船も運航されており、夕方の便に乗ればサンセットクルージングも楽しめる。この美しい光景を、しっかりと目に焼き付けよう。

 

現存する12天守のひとつ、松江城


宍道湖からさらに東へ進むと、松江市街地へとたどり着く。この地を代表する観光スポットが、江戸時代に築城された松江城だ。全国に現存する12天守のひとつに数えられており、2015年には国宝にも指定された。

日本唯一の正統天守ともいわれる松江城では、千鳥が羽を広げたような美しい三角形の入母屋破風や、高さ約2メートルもある日本現存の木造では最大の鯱鉾、屋根の隅々に見られる鬼瓦など、江戸時代の姿をそのまま残した見どころが多数ある。城を囲む松江城公園は、春になると約200本ものソメイヨシノやヤエザクラ、シダレザクラが咲き誇り、「日本の桜名所百選」にも選定されている。

築城と同時に造られた城をぐるりと囲むお堀も当時のままの姿を残している。堀には今も水が張りめぐらされており、小舟で周遊する堀川めぐりも今や観光名物だ。春には桜景色を眺めながら、夏には風鈴を吊るした風鈴船、冬にはコタツで温まりながら周遊するコタツ船と、四季折々の景色を楽しめるのも魅力。水の都たるゆえんをたっぷりと堪能しよう。

松江城の北側にはかつて藩士たちが暮らした武家屋敷の建築群や、作家・小泉八雲が一時期暮らしていた「小泉八雲旧居」などが立ち並ぶ塩見縄手と呼ばれるエリアがある。時間があれば立ち寄ってみてはいかが。

 

紺屋小路でハートの石畳を探す


 

松江城より南側、紺屋小路と呼ばれる細い路地は、石畳の美しい小道。周辺には昔ながらの家並みが広がり、ほっこりとした気分に浸らせてくれる。ここで密かに若者たちの間で人気となっているのが、ハートの石畳探しだ。この紺屋小路の石畳のどこかに、ハートが隠れている。この石畳を見つけると幸せになれるとの噂から、ハートマークを探す若者が多く訪れるという。見つけたら写真に収めて大事に保存しよう。

 

玉造(たまつくり)温泉で美肌の湯を堪能


出雲周辺エリアを観光したら、宿泊は玉造温泉へ。今から約1300年前に編纂された『出雲國風土記』にも記されている、日本最古級の温泉地だ。風土記には「1度入浴すれば肌が若返るようになり、2度入浴すればどんな病も治癒してしまう」と記述が残っており、地元の人々からは「神の湯」「姫神の湯」などと称されている。

温泉街には多くの温泉宿が軒を連ね、1000円で数カ所の湯めぐりを楽しめるお得なチケットなども販売されている。また、町なかには足湯がある姫神広場や温泉を利用したコスメを販売する「姫ラボ」、温泉水を汲んで持ち帰れる湧き水がある湯薬師広場、縁結びの玉作湯神社、そのほかパワースポットなどが点在しているので、ぶらり散策にぴったり。

餌を放ってコイが寄ってくれば恋が叶うといわれる「恋来井戸」

みやげ物にはステキなやきものを


出雲と松江は神話の里としてはもちろん、民芸の里としても広く知られる地域だ。この辺りは古くからやきもの作りが盛んで、1920年代には柳宗悦(やなぎむねよし)を中心とした民藝運動の影響も大きく受けた。

出雲市駅から車で10分ほどの「出西窯(しゅっさいがま)」、玉造温泉駅のすぐ近くに構える「湯町窯(ゆまちがま)」、松江駅から車で5分ほどの「袖師窯(そでしがま)」など、手仕事の器を製作する窯元で販売されているのは、昔ながらの味のある器からモダンなデザインのものまでさまざま 。普段使いできる器もあるので、おみやげにおすすめ。

 

このほかにも、神話や日本の神々にゆかりのある神社をはじめ、パワースポット、大自然の景勝地など、山陰エリアの見どころは数え切れない。この地に一歩足を踏み入れれば、神聖な空気に身も心も浄化されることだろう。