メサ・ヴェルデ国立公園の見どころ

メサ・ヴェルデ国立公園の見どころ

コロラド州の南西に位置するメサ・ヴェルデ国立公園は、アメリカ先住民の住居遺跡が保存されている貴重な史跡。ここは世界文化遺産にも登録されており、しかも世界で初めて登録された12の世界遺産のうちの一つだ。文明の存在を伝承する貴重な遺跡として古くから評価されてきた、メサ・ヴェルデ国立公園の魅力を紹介する。

ここには西暦550〜1300年頃までの700年以上の間、古代プエブロ人たちが定住していた。おもしろいのが、彼らが暮らしていた住居群。遺跡を一目見れば、その不思議で神秘的な様子に誰もが興味を持つだろう。彼らの集落は、断崖絶壁にできた窪みの空間を利用して形成されているのだ。

集落跡は、ただ公園内を普通の目線で探しただけでは見つからない。断崖に立ち、自分の立っている所と向かい側にある崖の側面へと少し目を落としてみよう。すると、断崖の窪みにすっぽりと収まるように、赤茶色の土壁でできた不思議な集落跡が見つかるだろう。パッと見た印象は、巨人が砂遊びで作り上げたおもちゃのお城のよう。その様相はまるで異国のような、エキゾチックな雰囲気が漂っている。

古代プエブロ人がこの地に住み始めた頃、彼らはまだ、簡易な道具を使って平地の上の小さな竪穴住居で暮らしていた。それから徐々に、生活の知恵を絞って道具を発展させ、住居も大きいものへと進化していったという。住人の数もどんどん増えていき、このエリア一帯に彼ら独自の文化が築かれていった。

彼らが断崖絶壁に集合住宅を建てるようになったのは、西暦1100年代。この奇妙な立地に住居群を建てたのは敵からの防衛のためか、はたまた宗教的な理由のためか、さまざまな憶測がなされているが、明確な理由はいまだ解明されていないという。

住居は日干しレンガや泥などで構築されている。各家には小さな窓がついており、換気もしっかりとできている。集落に必ずあるのが「キバ(Kiva)」と呼ばれる公共施設。円形の建物で、儀式や社交の場として使われていたそうだ。キバの内部は空気がうまく循環するよう、さまざまな工夫がなされている。

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さて、公園に着いたらまずはミュージアムへ行こう。ミュージアムは公園のずっと奥の方に位置している。公園のエントランスを入ってから1時間ほど、ちょっと不安になるくらいに奥へ奥へと進んでいくと、やっとミュージアムの看板が見えてくる。館内では古代プエブロ人たちがこのエリアに住み始めてからの歴史や、彼らの暮らしを示す生活用具、住居の仕組みなどを、ジオラマやパネル、実物などの展示で学ぶことができる。

ミュージアムで概要を学んだら、実際に遺跡を見てめぐろう。公園内には、保存状態のいい関連遺跡が約5000も点在している。そのうち、断崖に佇む集合住居跡は600ほど。集落の規模は大小さまざまで、少人数のものもあれば100人以上が暮らす大きな集落跡もある。

ミュージアムのすぐ裏に位置するのが「Spruce Tree House」という集落。園内で3番目に大きな集落跡で、60〜80人ほどの住人がいたという。周辺にはハイキングトレイルが敷かれており、コースが複数ある。この集落跡まで行けるコースのほか、壁に刻まれたペトログリフという岩絵が見られるコースなども。ペトログリフを見られるのは公園内でもここだけなので、ぜひ訪れていただきたい。

さらに公園の奥へと進むと、集落跡や関連遺跡が点在するループが2つある。メサ・トップ・ループ沿いには、実際のキバが間近で見られる遺跡跡やさまざまな規模の集落跡がたくさん並んでいる。「Square Tower House」で見られるのは、今でいうコンドミニアムのような高層タワーマンションだ。

さらに奥へと進むと、園内で最大規模を誇る「Cliff Palace」の全容を対岸から望むことができる。クリフ・パレスの集落エリアは幅約215フィート。この住居群には約150の部屋があり、100〜120人ほどの住人がいたという。キバが21個もあるうえに高層住宅もあることから、ここでは一族の権力者たちが暮らしていたと考えられている。

隣にあるクリフ・パレス・ループには、クリフ・パレスを間近で見られるビュースポットや、ツアーに参加することでしかその姿を見ることができない「Balcony House」などがある。クリフパレスはビュースポットからも見られるが、ツアーチケットを購入すれば集落の中に足を踏み入れることが可能。

公園の西側にも、ツアーでしか立ち入ることができない「Step House」「Long House」といった規模の大きな集落跡がある。これらの集落跡は、5〜10月の期間限定でツアーが実施されている。

公園内には唯一の宿泊施設「Far View Lodge」もあるので、じっくりと時間をかけて楽しみたいならここに宿泊するのがおすすめだ。