銃社会アメリカで衝撃的な目撃談

銃社会アメリカで衝撃的な目撃談

天気の良い昼下がり、気分も上々にドライブを楽しんでいたら、突然衝撃的な場面を目撃してしまった。

それは、大量のパトカーと銃を構えた10人近いポリスたち、そして銃口の先にいたのは、オープンカーに乗って両手を上げるおじいちゃんとそのツレという、なんとも言えない構図。

とても晴れていて暖かい日だった。

その日は家でじっとしているのはもったいないので、いろいろ考えた結果ラグーナビーチまで遊びに行くことにした。ロサンゼルスから南東へ車で1時間ほど走ったところにあるビーチだ。若者やセレブに人気のビーチということもあり、町は混み合っていた。なんとかパーキングスポットを見つけて車を停め、ビーチ沿いを歩いたりかわいい雑貨店を物色したり、カフェで一休みしたりとひとしきり楽しむ私。

あまり遅くなると道が混むので、ほどほどにして車に戻り帰路に着く。

その時はまだそんなに遅い時間でもないのに、道がやたら混んでいた。全然前に進まない車に乗って30分ほど渋滞をやり過ごすと、急に車が進み始めるポイントに到達した。

やっと進むわ、とホッとしてアクセルを踏もうとした時、視界の端に何か違和感を感じる。

左を見ると、そこは反対車線。なんと、パトカーが5台ほど停まっているではないか。さらにパトカーの前には10人前後のポリスたちが、映画さながらに拳銃を構えてある方向に一点集中している。「何ごと⁉︎」と驚いた私が拳銃の向けられた先を見ると……

そこには海辺のドライブウェイによく映える真っ赤なオープンカーが停まっていた。運転席には白髪でほっそりとしたおじいちゃんが両手を上げて座っている。その横の助手席には、白髪のおばあちゃんが小型犬を抱えて微動だにせずに座っていた。

え、なんやねん。
何が起こってんねん。

あのヨボヨボのおじいちゃん、何かしたんか?????

何の罪もない無垢そうなおじいちゃんが10人のポリスに囲まれ銃を突きつけられている現状がまったく飲み込めないまま、私は流れに沿って発車するしかなかった。

目の前に広がっていたのは、暖かい平和な昼下がりには到底マッチしない、不釣り合いな光景だった。

あの光景は頭に焼き付いて、一生忘れることはないのではないか。
一体あのおじいちゃんがどんな極悪非道な事件を起こしたのだろうか。私の目には弱々しい老人にしか見えなかったが、私が見ていたのは実は超が着くほど凶悪な犯罪者だったのだろうか。

あれは何度考えても解せない。

いやしかし、さすが銃社会。
アメリカにいると発砲事件なんてものは日常的によく聞く。

白人警察官が黒人に向けて発砲したとか、ライブ会場が銃撃されたとか、高校生が学校で銃をぶっ放したとか、日本では起こり得ない背筋が凍るようなニュースを目にすることもよくある。

ただ、怖いのはそれがニュースの中だけの話ではないということだ。

私が勤めている会社のオフィスは、お店が5、6店舗集まった小さなモールの並びにあるのだが、先日、そのモールにあるボーリング場で発砲事件が起きた。時間は午後3時頃。まさにオフィスで仕事をしている時間帯だ。どうやら客同士の間で揉め事が起こり、片方の客がキレてポケットから拳銃を取り出し発砲したらしい。犯人はしばらくの間逃亡していたが、最終的には捕まった。

まさか、私の職場の目と鼻の先でそんな事件が起こるとは。
逃亡した犯人が私たちのオフィスに逃げ込んで来るようなことがなくて本当によかった。

またある日は、私が日常的によく行くショッピングモールで発砲事件があった。家から車で20分ほどの生活圏内のモールだ。その時はどんな経緯で起きた事件だったか、もう忘れてしまったが、その犯人もしばらくは逃亡していたはずだ。たしか最終的には捕まったのだったと思う。事件当時にモールにいた人が撮影した動画が公開され、ニュースを見てゾッとしたのを覚えている。

アメリカでは、そんなニュースばかりだ。

アメリカに来てすぐの頃、同僚からこんな話を聞いた。

ヘリコプターが旋回するように飛んでいる場合、そのヘリは何か事件を起こした逃亡犯を探している可能性が高い。自分の家の頭上辺りを飛んでいるとしたら逃亡犯が家の付近をうろついている証拠だから、家の中に入ってこないようにドアと窓の鍵をしっかりしめておいたほうがいいよ、という話だった。

その話を聞いて以来、家にいる時に近くでヘリコプターの音がしたら、即座にドアと窓を閉めるようになった。そう考えてみると、ロサンゼルスに住んでからというものヘリコプターの音を聞く機会が多いような気がする。

人間、いつ死んでもおかしくないのだから1日1日を悔いなく最高に生きていかなければ、と改めて気を引き締める思いがした。

ただ、流れ弾に当たって死ぬのだけは絶対にごめんだとは思うが。