言語っておもしろい Part2

言語っておもしろい Part2

言語というものには不思議が溢れている。

最近、ふと気づいた。私たちにとって母語は1番容易に操ることができる言語だろうが、文法のルールや仕組みという点で考えた時に、実は母語のそれほど曖昧なものはないのではないだろうか。

以前、アメリカ人の友人と話をしていて、おもしろいことを発見した。

その友人は高校生の頃に日本語を勉強しており、日本語を多少話すことができる。ある時、その友人に今何時かを聞いたところ、「○時 “じゅういちふん” (○時11分)」と日本語で答えが返ってきた。何も間違えではないのだが、11分は “じゅういっぷん” と発音するんだよ、と教えてあげた。友人は “minute” を表す日本語の “分” の発音は「ふん」と習っていたので、「ぷん」もあることに関心し、その違いは何かと聞いてきた。

そこで私は首を傾げた。その質問にどう答えて良いか分からなかったのだ。
頭の中で、時間の数え方をおさらいしてみた。

いっぷん、にふん、さんぷん、よんふん、ごふん、ろっぷん、ななふん、はっぷん、きゅうふん、じゅっぷん……

分の前に「っ」が入る場合、発音は「ぷん」になるという規則性は分かった。しかし、分の前に「ん」が入る場合、「ぷん」になる時と「ふん」になる時がある。これはどう説明すれば良いのだろうか? 結局、私は中途半端な説明しかできず、「よく分からないよね」という何の解決にもならない言葉で会話を締めた。

同じように、「(人)は」「(人)が」の使い方の違いや「(どこ)に」「(どこ)で」の使い方の違いは何となく説明はできるのだが、突き詰めて考えると明確に説明することはできない。私たちは母語を身につける時、これらの言葉のルールを論理的に教わるのではなく、日々生きていくうえで感覚的に養っているのだ。

つい最近、この現象を逆の立場で見る機会があった。
英語の「The」の発音についてである。私たち日本人が日本の学校で「The」の発音を学ぶ時、子音の前に置かれている時は「ザ」、母音の前に置かれている時は「ジ」だと教えられる。しかし、アメリカ人と英語で会話をしている時に、日本の学校で習った通りに発音する人とそうでない人がいることに気づいた。そこで私は「The」の発音のルールについてアメリカ人の友人に聞いてみたところ、ほとんどの人が「ルールは分からないが、何となく使い分けている」と答えた。私が「The」の発音のルールは日本の学校でこう教わったと伝えると、初めて知った、アメリカでは学校でそのように教えられたことはない、と皆が口を揃えて言う。

彼らも彼らで、言語のルールは感覚的に養っているのだ。

自分が母語とする言語は感覚的に養われるものなので、細かいルール・規則までは理解していない。しかし、外国語を学ぶ時は文法や規則・ルールから学んでいくので、その言語を母語とする人々よりもむしろ外国語として学ぶ人々のほうが、言語を論理的に理解している。

自分の1番得意とする言語のことを実はよく分かっていないというのは、何とも不思議なことだなぁとしみじみ思ってしまった。