クレイジーなドライバーがはびこるロサンゼルスの交通事情

クレイジーなドライバーがはびこるロサンゼルスの交通事情

ロサンゼルスで生活するうえで、車の所持は欠かせない。

なぜなら、ここではバスや電車といった公共交通機関がほとんど普及していないからだ。場所によっては普及している所もあるが、ごく限られている。

たとえば、ダウンタウンやハリウッドのあたりは東西南北にメトロが運行されており、バスの本数も多い。この辺りはわりと公共交通機関が充実しているため、メトロやバスで通勤する人もいる。しかし、この繁華街エリアを一歩出てしまうと主要なポイントにしかメトロは停まらなくなり、バスの本数も1時間に1本程度と激減する。

ロサンゼルスというと映画やテレビといった華やかなエンターテインメントの中心地であり、それはそれは賑やかに栄えた街を想像する人が多いだろう。もちろんそのイメージは間違っていない。ただ、もともと砂漠に囲まれた街であるロサンゼルスではその華やかなエリアというのはとても小さな範囲で、大半を占めるのが、その繁華街を囲むすこぶるのどかな田舎風情の町なのだ。

 

 

私が住んでいるランチョ・パロス・ベルデス(Rancho Palos Verdes、通称PV)という町は、ロサンゼルスのダウンタウンから南へ車で30分ほどの、海岸沿いの町だ。ここは高台に位置する閑静な住宅街で、電車通っておらず、バスも滅多に停まらない。もちろん、食料品や日用品を調達できるスーパーマーケットもファストフード店やレストランなども、家から歩いて行ける距離にはない。

自転車でなら、がんばれば1番近いスーパーマーケットまで行けるかもしれないが、そもそも自転車を持っていないし、高台にある町なので起伏が激しく、自転車で移動するにはスポーツ選手並みの体力を要する。そもそも、場所と場所との距離感が日本とはだいぶ異なる。都心に住んでいれば、歩ける距離にコンビニ、スーパー、居酒屋などがあることが当たり前だが、ここアメリカでは場所と場所との距離感が日本の5倍、10倍あるのが普通だ。

とにかく車がないとどこにも行けないし、生活が成り立たないのである。

話がだいぶ逸れてしまった。
ロサンゼルスのドライバーたちの運転の荒さである。

とにかく荒い。

一般道をありえないスピードで走っていく車もいれば、ウィンカーも出さずに急に目の前に割り込んでくる車もいる。5車線ほどあるフリーウェイ(高速道路)では、ひたすら車線変更してグネグネと機敏に動きながら猛スピードで駆け抜けていく無謀な車もいる。

以前に一度、信号が青になった瞬間に後ろの車からホーンを鳴らされ、バックミラー越しに中指を立てられたことがある。青信号になってからモタモタしていたわけでもないにもかかわらず、だ。日本のように、右を見て左を見て、さあ出発しましょうといった具合にていねいに運転などしていると、後ろからすかさず「ププーッ」と急かされる。

なんとなく、アメリカ人(というかロサンゼルスの住民)は日本人に比べて陽気でのんびりしたマイペースな人が多いような気がするのだが、車の運転となると人が豹変したように乱暴になる。なぜなのだろう。不思議だ。

こんな具合なので、ロサンゼルスでは自動車事故がとても多い。毎日どこかしらで必ず車と車がぶつかっている。それも1件や2件ではなく、無数の自動車事故が毎日どこかで起きているのだ。

かくいう私も、実は衝突事故に巻き込まれたことがある。

フリーウェイを走っていた時のことだ。フリーウェイを降りて一般道に入る境目で、赤信号だったので車を停止したら後ろから思いっきりぶつけられた。おそらく赤信号に気づかず、フリーウェイで走っていた速度のまま突っ込んできたのだろう。その時は何が起こったのか一瞬分からず、結局私の車は全損となった。

町なかを運転していて、隣を走っていた車が前の車にぶつかる瞬間を目撃したこともある。どうやったらこんな悲惨なことになるのかと不思議になるくらい、大破した車を見かけたこともある。自由の国アメリカにはクレイジーなやつらも多いのだ。

と、ここまでロサンゼルスの車事情がいかに恐ろしいかを伝えてきたわけだが、そんなのは長く住んでいれば慣れてくる。かくいう私も、住み始めて2年目くらいにはこの日々の戦いに慣れてしまい、特段、恐怖を感じることもなくなった。

今日もクレイジーなドライバーたちと果敢に張り合いながら、私は颯爽と我が愛車・プリウスを走らせるのである。