浸食が造り出した奇岩群「アーチーズ国立公園」の見どころ
- 2017.09.17
- ユタ/Utah
広大な国・アメリカには自然が織りなす数多くのユニークな景観がある。とりわけ不思議な自然の造形美を見ることができるのが、ユタ州の南東部に位置するArches National Park(アーチーズ国立公園)だ。
公園の広さはおよそ300平方キロ。エントランスから一番奥まで行って帰ってくるのに、車で1時間半かかるほどの規模だ。すべてのビューポイントを見て回るには半日必要となる。ハイキングも考えているのであれば、1日いても足りないくらいだ。それほどこの公園は、見どころが多数詰まっている。
まずはビジターセンターへ
ビジターセンターの館内にはスタッフが常駐しており、アーチーズの見どころやおすすめのハイキングコースなどを教えてくれる。タイムリミットがある人には、限られた時間のなかでどのようにめぐるのがいいかアドバイスしてくれるので、まずはここで計画を立てよう。内部には資料館も併設されているので、アーチーズの歴史や成り立ちを学ぶこともできる。基本情報を入手したら、さっそく公園へと繰り出そう。
この国立公園の1番の特徴はその名が示す通り、アーチ状の岩が多数点在していること。その数は2000以上といわれ、世界でもっともアーチ状の岩が多い地域とされている。では、なぜこのようなアーチ状に浸食されることになったのだろうか。
アーチーズ一帯にある岩は、岩塩層の上に無数の砂の粒がミネラルにより固められたものでできている。これらの岩がおよそ1億年かけて水や氷、風による浸食で徐々に形を変え、下部がえぐれて上部が橋のように残ったことで、アーチ状の奇岩となったのである。
この光景をさらにユニークにしているのが、岩の色。四方に広がる赤い奇岩群は、圧倒的な自然のパワーを感じさせる。公園内にはGarden of Eden(エデンの庭)やDevils Garden (悪魔の庭)といった神々の庭のようなビューポイントもあるので、ぜひ訪れてほしい。巨岩の間を縫って歩いていると、自分がとても小さい存在のように思えてくるはず。
絶対訪れたいハイキングコース
時間があるのであれば、すべてのビューポイントを一つずつ見たいところ。ここではあまり時間がない人のために、押さえてほしいハイキングスポットを紹介する。
まずひとつ目が、デリケートアーチ(Delicate Arch)までのハイキングコース。公園のおよそ中腹に位置するデリケートアーチは、アーチーズのランドマークとなっている1番有名なアーチだ。出発地点からビューポイントまでは約1.6キロで、往復で1時間半ほどかかる。
最初は整備された道を歩き、途中からは岩場をひたすら登っていくコースとなる。道という道はないが、ところどころに案内板が立っているのでそれに沿って進むめば大丈夫。何かのおまじないなのか、道端には時折、微妙なバランスで石を30センチほど積んだものが立っている。
酷暑と乾燥のなか、ラストスパートは崖の脇を歩くコースなどなかなかの険しい道のりだが、大きな岩をぐるりと回ると一気に視界が開け、目の前にはデリケートアーチの絶景が広がる。丘の上に高さ約20メートル、幅約14メートルの巨岩が立つ光景は圧巻。なぜこんな場所にこのような立派なアーチが残ったのか不思議だ。
ふたつ目は、デビルズ・ガーデン(Devils Garden)と呼ばれるエリア。この一帯には有名なランドスケープアーチ(Landscape Arch)をはじめ、パインツリーアーチ(Pine Tree Arch)、ダブルオーアーチ(Double O Arch)など複数のアーチが点在している。すべてのアーチを見ようとすると往復約11キロのコースとなるが、ランドスケープアーチだけであれば往復3キロ(20〜30分)ほどで見て帰ってこられる。
長さ約90メートルのランドスケープアーチは、アーチ部分の幅がわずか2メートル。ここ25年ほどの間にも少しずつ岩の塊が落下しており、徐々に厚さが薄くなっているらしい。アーチが崩れてしまう前に、ぜひ一度見ておきたい。ランドスケープアーチ周辺まではなだらかな道を歩いてビューポイントを見て回れるが、奥のダブルオーアーチの方まで行くと崖を登る行程などがあり、中・上級者向け。
アーチーズは24時間空いており、キャンプ場も備わっている。園内にはシカやキツネ、ウサギやカンガルーネズミなどが生息しており、夜間には活動的になるため、キャンプ場で一晩過ごすのもおすすめ。
I-70 (Crescent Junction)からUS191を南へ車で約22マイル。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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