情緒溢れる長野・渋温泉へ、ひと味違った温泉旅

情緒溢れる長野・渋温泉へ、ひと味違った温泉旅

長野県の北部、下高井郡山ノ内町の山深い場所にある渋温泉は、開湯1300年の歴史ある温泉地。温泉大国として知られる長野の中でも特に源泉の種類が多く、目的や体調に合わせて湯めぐりを楽しめる。

渋温泉の魅力は、なんといっても豊富な湯量。地面を掘ればすぐにお湯が出てしまうほど湯量に恵まれており、ここではすべての旅館と外湯が100%源泉掛け流しだ。歴史を感じさせる町並みや個性溢れる数々の旅館など、訪れた人々を即座に虜にしてしまう渋温泉の楽しみ方を紹介する。

制覇すれば幸運が訪れる⁉︎ 渋温泉の「九湯めぐり」

渋温泉の町なかには、九つの外湯(共同浴場)がある。それぞれ源泉が異なり、美肌や病気回復、切り傷や皮膚病に効くなど、効能もさまざま。目的に合わせていくつかの外湯に入ってみてもいいが、せっかくなら九つすべての外湯をめぐって肌触りや湯質の違いを楽しむのがおすすめ。

渋温泉の外湯は地元住民のほか、渋温泉の宿泊客しか利用することができない。利用する際は、宿で渡される外湯の鍵を使って各建物に入ろう。

渋温泉では、九つの湯をめぐることで厄除け成就ができる。宿で「祈願手ぬぐい」(税込350円)を購入し、各外湯に設置されたスタンプを押しながらすべてめぐろう。最後に階段を上った高台にある渋高薬師をお参りして印受すれば、満願成就! 九湯をすべてめぐったら、良いことが起こるかも。

入浴時間は午前6時〜午後10時まで。それぞれの外湯は大小さまざまで、大浴場のように大勢入れる所もあれば、3〜4人入ったらいっぱいになってしまう所も。また、100%源泉掛け流しなので湯温は50〜65度ととても高い。そのまま入ると火傷してしまうかもしれないので、まずは手先で温度を確認しよう。さし水用の水道が設置されているので、熱い場合は水を足して調節するといい。

レトロな町歩き

渋温泉には、大正〜昭和初期に建てられた建築物が多数残っている。格子戸や土壁、増改築を繰り返した複雑な木造建築、石畳の細い路地など町の雰囲気は独特で、まるで過去にタイムスリップしたかのよう。

町なかには射的場や卓球場、ソフビ人形を集めたギャラリーなど、レトロ感が溢れるおもしろいお店が点在しているので、のんびりと散策してみよう。地元の住民も皆気さくで、すれ違えば笑顔で挨拶してくれる。渋温泉の町を少し歩けば、身も心もほっこりと温まること間違いなし。

ジブリ映画の舞台になったといわれる旅館「金具屋」

歴史的建築物として見逃せないものの一つが、「金具屋」という旅館。昭和11年に建てられた4階建の木造建築で、スギの通し柱で造られた約15メートルの楼閣と折り上げ格天井がみごとな大広間は、平成15年に国の登録有形文化財に認定された。

建設当時のままの姿を残しているのはもちろん素晴らしいが、実はここ、今も現役の旅館として営業している。宿泊客は、宮大工が手がけた日本のワビサビを感じる部屋に宿泊することができるのだ。細部まで匠の技を見て回ることができる、宿泊者限定の建物内見学ツアーもおすすめ。

金具屋には露天風呂、内風呂、貸切風呂などを合わせて八つの温泉が楽しめる。石造りの風呂や鎌倉風呂、舟形の風呂、戦後の洋風文化の流行を取り入れた浪漫風呂など、金具屋でしか味わえない独特な湯舟を堪能できるので、歴史的建築物に興味がある人は泊まってみてはいかが?

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横湯山温泉寺でパワーをもらう

渋温泉街の東側に位置し、町を見渡せる小高い丘の上にある横湯山温泉寺は、戦国時代の武将・武田信玄ゆかりの寺。川中島の合戦で負傷した武田軍がこの地で傷を癒したことから、武田信玄がこの寺領に寄進したとされている。龍神の伝説も残っており、渋温泉のパワースポットとして地元民に愛されている。

横湯山温泉寺から渋高薬師までは、「御利益散歩道」と名付けられた遊歩道で繋がっている。15〜20分ほどで歩ける散歩道の途中には、金刀比羅宮や不動尊などの神社仏閣が点在している。霊験あらたかな寺社をめぐって神聖なパワーをいただこう。

温泉に浸かるニホンザルが見られる「地獄谷野猿公苑」

ニホンザルが気持ち良さそうに温泉に浸かる姿が見られる、あの有名なスポット。SNSでの投稿から一気に知名度が上がり、外国人観光客からも注目されるようになった、今や一大観光名所だ。

野猿公苑では、自然のままに暮らす野生のニホンザルの群れを見ることができる。公苑内には温泉が湧いており、冬になると寒さをしのごうとサルたちがこぞって湯舟に浸る。その気持ち良さそうな顔は、おかしいやら愛らしいやら。世界で唯一サルが温泉に入る場所ともいわれており、多くの研究者や写真家も訪れるらしい。

野猿公苑は渋温泉の中心地から車で10分ほど。専用駐車場に車を停めて、サルたちが棲む山の斜面まで歩いていく。春や夏にもたむろするサルたちを見ることはできるが、温泉に浸かる姿を見られるのは主に冬の間のみ。ただし、冬は雪深くなる土地なので、車でのアクセスには気をつけよう。

長野グルメといえば、やっぱり信州そば

長野へ行ったのなら絶対食べたいのがおそば。信州そばとひと言で言っても、戸隠そばや更科そばなどさまざまな種類があり、食べ方も多種多様だ。

ここ渋温泉で本格的なそばを味わえるのが、「手打蕎麦うどん 玉川本店」。契約栽培した玄そばを石臼で自家製粉し、手打ちのそばを提供してくれる。そば本来の旨みと甘みを楽しんでもらうために、そばの浸けだれや汁にもこだわっている。

不揃いな麺は手打ち感があり、少しざらりとした食感。噛めば噛むほど、そばそのものの香りが口の中に広がる。おすすめは、くるみだれ。クルミの味がしっかりと感じられるクリーミーなたれは、そばとよく合っている。

 

 

歴史風情の溢れる渋温泉は、町全体がいつもウェルカムな温かい雰囲気に包まれている。都会の喧騒から離れ、静かな温泉地でホッとひと息つきたい人にはおすすめのスポットだ。