宿場町の面影残る「奈良井宿」を散策して江戸時代にタイムスリップ
- 2021.10.15
- 長野/Nagano
静かな路地の両側を挟むように立ち並ぶのは、古き良き日本を思わせるノスタルジックな木造建築。ここ奈良井宿は、東京・日本橋から京都・三条大橋まで全長534キロを結ぶ中山道の宿場町だ。江戸時代に整備された五街道の一つ、中山道にある69の宿場町のうち34番目に位置し、街道のちょうど真ん中あたりに位置する。
その町並みの美しさに数々の賞を受賞し、国内外から多くの人々を引き寄せる奈良井宿の魅力に迫る!
宿場町って何?
宿場町とは、街道沿いに発展した商業集落のこと。隣の宿場から運ばれてきた公用の荷物や通信物を次の宿場まで運ぶ問屋場が中心となっており、旅人が休憩したり宿屋で泊まったりできる休憩拠点の役割も果たしていた。こうした宿場町は現代まで大事に保存されている所も多く、往時の町並みを色濃く残している。
奈良井宿は約1キロにわたって町並みが形成された、日本最長の宿場だ。旅籠の軒先にかかる灯火や千本格子など江戸時代の建築様式を今も見ることができ、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。江戸時代の町屋建築を特徴づけるものとしては、2階が少しせり出している出梁(だしばり)造り、出入りに使うくぐり戸、2階部分の真っ黒く煤けた手すり格子、白漆喰の袖うだつなどがある。また、奈良井宿には明治以降に建てられた洋風建築や昭和に建てられた高さの高い建物などもあり、多様な建築物を見られるのも魅力。
奈良井宿の見どころ
まずは奈良井宿の街道沿いをゆっくりと散策してみよう。日本最長の宿場町とはいえ全長約1キロなので、30分もあれば端から端まで歩くことができる。散策しながら建築物の造形を細部まで観察してみると、異なる時代に造られた建築物は特徴も異なることが分かるはず。
なかでも見逃せないのが、手塚家住宅と中村邸。手塚家住宅は天保11年(1840)に建造された上問屋で、国の指定重要文化財として内部が公開されている。間口の広さや内部の優れた意匠は必見。また、かつては櫛問屋だった中村邸は、天保8〜14年(1837〜1843)に建造された市指定有形文化財。ここには間口が狭く奥に深い造りとなっている主屋と土蔵があり、奈良井宿の典型的な町屋造りとされている。
町なかには商売にちなんで付けられた屋号の木札が今も家の玄関にかかっていたり、かつて旅人の喉の渇きを潤してきた水場が6カ所残っていたりと、江戸時代の面影をあちらこちらで垣間見ることができる。時間があれば、寛文4年(1664)の創建以来、町を見守り続けてきた鎮神社にも挨拶に立ち寄ろう。
そのほか、総檜造りの橋脚を持たない太鼓橋「木曽の大橋」や、樹齢数百年の大樹が続く中山道杉並木、異なる年代に制作されたさまざまな表情の石仏が並ぶ二百地蔵など、奈良井宿の周辺にも見どころが多い。
町なかには町家を利用した食事処や茶屋が多数あるので、散策に疲れたら一休みしよう。地元の清冽な水や玄そばを使った信州そばや奈良井宿特有の丸い五平餅のほか、コーヒーや甘味など、さまざまなお店が点在している。筆者のおすすめは、ここでしか食べることができない丸い五平餅とくるみダレの組み合わせ。外はパリッと、中はモチモチとしていて、サイズも小さいので小腹を満たすのにバッチリ!
おみやげを買うならココ!
才田屋漆器店
お箸やお椀などの小さな食器から箪笥などの大きな家具まで、さまざまな漆器を取り扱うお店。地元の素材を使った伝統工芸品が多数取り扱われているので、おみやげにおすすめだ。特に人気なのが漆塗りの菜箸。手に取ってみると分かるが、とても軽くて扱いやすく、長持ちするので地域の住民からも愛用されているのだとか。
ギャラリー「パウザ・ディ・クローマ」
女性へのおみやげにおすすめなのが、ここ「パウザ・ディ・クローマ」。四季折々の自然の草花を使ってイヤリングやペンダントに特殊加工したアクセサリーを販売するギャラリーショップだ。一つひとつ手作業で作っているので同じものは二つとなく、その美しさと儚さが魅力で遠方からわざわざ買いに来る客もいるほどの人気だそう。
おやき「てずから」
長野グルメといえば外せないのがおやき。ここ奈良井宿にある唯一のおやき店「てずから」では、長野県産の地粉を使用して一つひとつていねいに作られたおやきを販売している。生地はパンのようなふわふわの食感で、その素朴な味はなんだか懐かしさを感じさせてくれる。おみやげはもちろん、出来立てをその場で食べながら散策するのもおすすめ。
奈良井宿へのアクセス
車で訪れるなら、塩尻ICまたは伊那ICから約40分。木曽の大橋周辺には無料の駐車場もある。電車で訪れるなら、JR中央本線奈良井駅で下車。
東京方面からも名古屋方面からもアクセスのしやすい奈良井宿へ、ノスタルジックの旅に訪れてみてはいかが?
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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