熊野古道〜大門坂から歩く熊野那智大社〜

熊野古道〜大門坂から歩く熊野那智大社〜

和歌山県の熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社と那智山青岸渡寺を合わせて熊野三山と称される地は古来、信仰の地として知られてきた。この熊野三山へと通じる参詣道は「熊野古道」と呼ばれ、多くの人々が参詣する霊場だ。

熊野三山が位置する紀伊山地は、古くから神々が鎮座する神聖な地域として崇められてきた。紀伊山地には熊野三山のほかに高野山と吉野・大峯という霊場があり、これらを結ぶ参詣道はすべて熊野古道だ。平成16年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界文化遺産にも登録された。

これらの霊場は広範囲にわたるため、すべてを参詣するには多くの日数を要する。今回は大門坂を起点に熊野三山のひとつ、熊野那智大社へと歩くルートを紹介する。約2時間で歩けるコースなので、体力に自信がない方でも安心して参詣が可能だ。

 

大門坂


大門坂バス停または大門坂駐車場から県道を少し歩くと、「大門坂茶屋」が見えてくる。ここでは平安時代の衣裳レンタルや記念撮影を行っており、着物を身にまとえばかつての雰囲気を味わうことができる。

すぐそばには鳥居と朱塗りの橋があり、この橋は聖域と俗界を分ける境目とされている。少し進むと夫婦杉が見えてくる。道を挟んだ両側にそびえる背の高いスギの木々は、参拝者を迎え入れるかのような佇まい。樹齢800年ほどとされる古い木だ。

夫婦杉を通り過ぎると、杉木立の中を縫う石畳の階段がずっと先へと延びる。まさにみなさんが想像する熊野古道の、雰囲気ある参詣道だ。空気はひやりと冷たく、四方八方から自然のパワーを感じられることだろう。

 

多富気王子


少し進むと、右側に石碑が見えてくる。これは多富気王子といわれ、九十九王子の最後の王子跡だ。九十九王子とは、古道沿いに設けられた熊野権現の御子神を祀る神社(王子社)のこと。

かつては旅人や貴族がこれらの神社で休息をとったり宿としたりしたといわれている。九十九というのは全部で99あるわけではなく、数が多いことを表現している。

熊野那智大社


多富気王子から15〜20分ほど歩くと、みやげ物店が両側に立ち並ぶ参道へと突入する。なかなか険しい石段が続くので、みやげ物店をのぞき見しながら無理をせずに進もう。

朱塗りの鳥居をくぐって石段を登りきると、熊野那智大社へとたどり着く。鮮やかな朱塗りの美しい御本殿は6棟からなり、熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)を御主神として、それぞれに神様が祀られている。

拝殿でお参りをしたら、境内の御縣彦社(みあがたひこしゃ)に祀られている八咫烏(やたがらす)も拝観しておこう。八咫烏は3本足のカラス。熊野の神のお使いとされ、物事をより良い方向へと導く神様ともいわれている。

 

那智山 青岸渡寺(せいがんとじ)


熊野那智大社と並んで建つのは、熊野三山のひとつに数えられている青岸渡寺。現在の本堂は豊臣秀吉が再建したもので、桃山時代の特徴を色濃く残している。西国三十三所の一番札所としても知られている。

本堂の裏には朱塗りの三重塔と那智大滝が見られる。朱色の塔と背後の緑に覆われた山のコントラストが美しく、勢いよく流れ落ちる滝との測られたような配置も素晴らしい。那智大滝は落差133メートル、銚子口の幅13メートル、滝壺の深さ10メートル。落差日本一の名瀑といわれ、大晦日にはライトアップも行われるそうだ。

ここを訪れたならぜひ購入していただきたいのが、那智黒グルメ。この辺り一帯で採取される黒い石を那智黒石というが、ここでいう那智黒は黒糖を使ったお菓子のことだ。那智黒飴や那智黒ソフトクリームなど、ほどよい甘さのお菓子はおすすめ。

 

帰りは青岸渡寺から石段を下ったところにあるバス停から、大門坂まで戻ると楽だ。体力に自信がある方は、紀勢本線那智駅から4時間ほどかけて歩くコースもあるので、挑戦してみてはいかが。

熊野那智大社
大門坂までは、紀勢本線那智駅からバス約10分

旅行雑誌、情報誌の編集者兼ライター。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。