神秘の森、グレート・スモーキー山脈国立公園

神秘の森、グレート・スモーキー山脈国立公園

アメリカの東部、テネシー州とノースカロライナ州の州境に位置するグレート・スモーキー山脈国立公園(Great Smoky Mountains National Park)は、豊かな自然が広がる山岳地帯。大切に守られてきた手つかずの原生林が今なお残っており、アメリカ国内の国立公園のなかでは年間最大の来訪者数を誇る。そんな人気の高いグレート・スモーキー山脈国立公園、日本ではあまり知られていないが、一体どんな場所なのだろうか。

 

 

その名の由来は森を覆う霧

グレート・スモーキー山脈国立公園の魅力の一つとなっているのが、広大な原生林を覆う霧。ある気候条件が整うと木々から発せられる蒸気によって森はしばしば濃い霧で覆われる。その光景があまりにも神秘的で独特なことから、「グレート・スモーキー」という名称がついたのだそうだ。

園内にそびえるのは、標高1800メートルを超す16の山々。高低差266〜2024メートルと変化に富んだ地形と温度帯が、多様な動植物の生息分布をつくり出した。現在、園内には固有種を含む3500種以上の植物が生息しており、その数はなんとヨーロッパ全体に生息する木々の数に匹敵するのだそう。

東京都とほぼ同じ広さもある国立公園の敷地のうち95パーセントは、手つかずの自然が保持されている。森林には、アメリカグマやアカギツネといった多種の哺乳類が生息しているという。絶滅危惧種に指定された生物も多く確認されており、サンショウウオもその一種だ。ここでは30種ものサンショウウオが見られ、「サンショウウオの首都」ともいわれている。

この類稀な生物学的価値が高く評価され、1983年には世界自然遺産に登録された。

 

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園内の見どころ

 

NPS Photo

グレート・スモーキー山脈国立公園の主な入口は3つ。北側のテネシー州からはガトリンバーグ(Gatlinburg)とタウンセンド(Townsend)、南側のノースカロライナ州からはチェロキー(Cherokee)を通って入ることができる。タウンセンドの入口付近、公園の西側にあるケイズコーブ(Cades Cove)という谷は、野生動物を観察できるスポット。エルクやブラックベア、コヨーテなど、さまざまな動物にめぐり会えるチャンスだ。谷をくねくねと横切る11マイルのループロードでは、美しい山脈を眺めながらドライブも楽しめる。絶景を眺めながら、姿を隠している野生動物に目を凝らしてみて。

ガトリンバーグから入ると、周辺には滝が多く点在している。約24メートルの高さから流れる一番人気のローレル滝(Laurel Falls)や、晴れた午後には滝のミストが作り出す虹が見られるレインボー滝(Rainbow Falls)をはじめ、なんと園内には100以上の滝があるという。どこに行こうか迷った時は、ビジターセンターでおすすめの滝やハイキングトレイルを聞いてみよう。

公園の中央を縦断し、ガトリンバーグとチェロキーを結ぶニューファウンド・ギャップロード(Newfound Gap Road)はドライブに最適。なかほどに位置するビューポイント、ニューファウンド・ギャップもお見逃しなく。ここは標高約1520メートルの高さで、谷を一望することができる。また、ニューファウンド・ギャップから南西へと続く道を行くと、園内最高峰2024メートルのクリングマンズ・ドーム(Clingmans Dome)にたどり着く。ここに立ち入れるのは春から秋にかけてのみ。

時間に余裕があれば、公園の東側に位置するカタルーチー・バレー(Cataloochee Valley)にも足を伸ばそう。この辺りにはかつて生活を営んでいた人々の文化遺産が残っている。野生動物との遭遇率も高いので、動物観察をしたい人にはおすすめだ。

四季折々の景色を楽しもう

5月末〜6月末には幾重にも折り重なるホタルの光を、秋には赤や黄、ゴールドに染まる紅葉を見られるグレート・スモーキー山脈国立公園。どの季節に訪れても、変化に富んだ表情を見せてくれるだろう。