輪島に伝わる伝統芸能、御陣乗太鼓とは

輪島に伝わる伝統芸能、御陣乗太鼓とは

一度見たら忘れられない。演者の気迫にただただ圧倒される、そんな心震わす郷土芸能が石川県輪島市にある。輪島朝市で知られる中心街から東へ、白米千枚田をさらに過ぎた所にある名舟町。ここに伝わる「御陣乗太鼓(ごじんじょだいこ)」は、この町で生まれた男子にのみ代々伝承されてきた和太鼓だ。

おどろおどろしいお面を付けた男たちが髪を振り乱して奇声を上げ、力強く太鼓を打ち鳴らす様子は、一度見たら目に焼き付いてしまうほど圧倒的な迫力がある。輪島を訪れたなら、御陣乗太鼓の実演はぜひ見ていただきたい。

始まりは約400年前。天正4年(1576)、七尾城を攻略した越後の上杉謙信は、兵を率いて奥能登へと駒を進める。現在の珠洲市三崎町に上陸したのち、各地を平定して名舟村へと攻め込んできた。武器を持たない村人たちは古老の指示に従って木の皮で鬼や亡霊の面を作り、海藻を髪の毛に見立てて振り乱しながら陣太鼓を打ち鳴らして奇襲をかけ、上杉勢を敗走させたといわれている。

この勝利は、名舟村より約50キロ沖合に位置する舳倉島(へぐらじま)の奥津比咩(おきつひめ)神の御神威によるものとされ、それ以来、奥津比咩神社の例祭「名舟大祭」で太鼓を奉納するようになった。毎年7月31日と8月1日に開催される名舟大祭では、能登半島に伝わる神輿「キリコ」の行列とともに御陣乗太鼓が奉納される。

この御陣乗太鼓、とにかく迫力が凄まじい。恐ろしい形相のお面にも圧倒されるが、男たちが発する奇声、怒声や俊敏な動きに加え、太鼓が割れんばかりに力一杯バンバン、ドンドンと叩くその音が胸の奥に響き、一気に彼らの世界へと引き込まれる。

舞台に登場するのは夜叉、達磨、女幽霊、男幽霊、翁。それぞれの面をかぶった男たちが演舞を披露する。最初に登場するのはひときわ恐ろしい表情の夜叉。威嚇するような叫びをあげ、ダン、ダンと力いっぱい太鼓を叩く。そこから一人、また一人と舞台へ演者が登場し、太鼓の音も徐々に激しくなっていく。

まずは夜叉の太鼓打ちから始まる

バチが割れるのではないかというくらい力をこめて太鼓を叩き、見えを切る男たちの姿、そして彼らの渾身の叫びは、人々を震撼させる。でも、恐れとは少し違う。彼らの勇壮な姿はとても力強く、美しく、感動で見る者の心を震わせる。

最初にも述べたが、御陣乗太鼓は地元に生まれた男子にのみ伝承される、門外不出の伝統芸能だ。こどもの頃からその技を学び、大人たちも毎日のように練習を重ねているという。このように情熱をこめて古来の習わしを大切に守ってきた伝統だからこそ、人々の心をいつまでも惹きつけるのだろう。

例大祭は年に1度の行事だが、一人でも多くの方に御陣乗太鼓を楽しんでもらうため、輪島市内では「輪島キリコ会館」をはじめ、「ホテル高州園」などの宿泊施設で無料実演が実施されている。輪島キリコ会館ではもてなし広場で冬を除く毎月、夏はほぼ毎日開催されているので、事前にスケジュールを調べて訪れよう。

御陣乗太鼓
オフィシャルサイト/http://www.gojinjodaiko.jp/
名舟大祭
開催日/毎年7月31日(宵祭)、8月1日(本祭)
開催場所/石川県輪島市名舟町