瀬戸内の島々でアート三昧

瀬戸内の島々でアート三昧

岡山県と香川県の間を隔てる瀬戸内海には、無数の小さな島々が浮かんでいる。ここ数年これらの島々でアツいのが、ユニークなアート作品の数々。2010年からは3年に1度、現代アートのトリエンナーレ「瀬戸内国際芸術祭」が開催されるようになり、その人気は海外からも来場者が訪れるほどだ。各島に設置されるアート作品は年々増え、何度訪れても新鮮な気持ちでアートめぐりを楽しめる。そんな瀬戸内海の島々でも特に人気があるアートの島をいくつか紹介する。

 

近代化産業遺産が残る、犬島


 

岡山県の宝伝港からフェリーですぐの小さな犬島には、かつて近代化産業に貢献した精錬所が今もその姿を残している。明治42年(1909)に建設されたこの銅精錬所は、全盛期には2000人ほどの従業員がいたそうだが、銅価格の大暴落によってわずか10年で操業を終えた。レンガ造りの工場跡や巨大な煙突など、当時の遺構が今もきれいに保存されている。

現在はこの精錬所の建物を利用した「犬島精錬所美術館」が、アートの拠点として人気だ。工場内部は薄暗く、窓から外の光をうまく取り入れたユニークな展示手法がおもしろい。現代アーティスト・柳幸典による展示作品は、日本の近代化に警鐘を鳴らした小説家・三島由紀夫の訴えをモチーフにしており、近代化産業遺産とのコラボレーションはいろいろと考えさせられるものがある。

犬島ではこのほかにも「家プロジェクト」と呼ばれるアートギャラリー群がある。島内の集落に溶け込むように建つギャラリーは、日常の中に潜む美しい風景や身近な自然をアートを通して感じられるように、との思いがこめられている。動物や植物を思い起こさせるような不思議なオブジェがあったり、空間と外から差し込む光をうまく利用した作品があったりと、頭を使って想像力を働かせれば何かが見えてくるようだ。

大きな家に住む犬の作品も

 

ユニークなアート作品が多い豊島


犬島のやや南に位置する豊島(てしま)は、約1000年にわたり石材業で栄えてきた島。緑豊かな森と豊富な湧き水に恵まれており、乳牛を多く飼育することから「ミルクの島」とも呼ばれている。

唐櫃(からと)港から海岸沿いに少し東へ行ったところにある「心臓音のアーカイブ」という作品は、とてもユニークなアートだ。フランスのアーティストであるクリスチャン・ボルタンスキーが手がけたこの作品は、世界中の人々の心臓音を集めて公開したもの。部屋に響き渡る心臓音にしばらく耳を傾けていると、母親のお腹の中にいるような、温かいようなとても不思議な気分になってくる。

建築家・西沢立衛(りゅうえ)とアーティスト・内藤礼による美術館「豊島美術館」は、棚田が広がる丘の真ん中に建物が建つ。アート作品はもちろん、光が注ぐ角度なども計算した建築物にも注目していただきたい。時間の流れによって表情を変える、自然の摂理と一体化したアート作品は心に安らぎを与えてくれるだろう。

そのほかにも日本の現代アーティスト・スプツニ子!による作品や古い集会場を利用した作品など、おもしろい作品が多くの人々を引き寄せる。島の食材を使った料理を提供してくれる「島キッチン」でひと休みしながら、アートめぐりを楽しもう。

 

赤かぼちゃが迎えてくれる、直島


豊島の西側に位置する直島(なおしま)。フェリーの発着点である宮浦港では、草間彌生のシンボルである黒いドットの赤かぼちゃが出迎えてくれる。港から少し内陸に入ったところにはやけに派手な外観をした銭湯が立っており、これもアート作品の一環だ。「I❤︎湯」と名付けられたこの作品は、実際に入浴もできる体験型のアート。

本村地区では「家プロジェクト」が開催されている。空き家となった昔ながらの古民家を利用して、思いおもいに表現されたアートがそこかしこに点在。暗闇の部屋で無数のLEDを点した現代的な作品もあれば、古いガラクタを寄せ集めたような一見ちぐはぐな作品なども。

ほかにも、世界的な建築家・安藤忠雄が手がけるコンクリートのミュージアムや五感を使って全身で感じる「地中美術館」、大きな空間を利用したアート作品が見られる「ベネッセハウスミュージアム」など、見どころが多数あるのでじっくりと時間をかけてめぐりたいところだ。

 

歴史と文化に紐づいたアートの宝庫、小豆島


オリーブ畑に突如現れる《オリーブのリーゼント》by清水久和

瀬戸内海では淡路島に次いで大きな面積を誇る小豆島(しょうどしま)は、独自の歴史と文化が息づいている。日本最古の歴史書『古事記』にも登場するほどの歴史ある島だ。この地には江戸時代から続く農村歌舞伎と呼ばれる芝居が今も受け継がれているほか、弘法大師・空海のゆかりがある八十八ヶ所霊場など、由緒ある歴史がそこかしこに残っている。

島のあちこちには特産物であるオリーブをモチーフとした作品や、景勝地である千枚田を舞台とした作品などがあり、アートを通しても島の魅力を実感することができる。タレントであり映画監督でもあるビートたけしと、現代アーティスト・ヤノベケンジがコラボした作品「アンガー・フロム・ザ・ボトム」もお見逃しなく。島はとても広いので、車やバスでの移動がおすすめ。

 

瀬戸内国際芸術祭の会場となっているのは、これ以外にも男木島、女木島、大島など全部で14会場。これらの島々は岡山県の宇野港と宝伝港、香川県の高松港などからフェリーや高速船でアクセスが可能だ。2019年には4回目の芸術祭が開催されるので、これからさらに盛り上がりを見せるだろう。