冬の福島・会津へ - 雪、温泉、史跡めぐり -

冬の福島・会津へ - 雪、温泉、史跡めぐり -

冬の旅の目的地としておすすめしたいのが、福島県の会津地方。歴史的な建築群や代々受け継がれてきた伝統工芸の匠の技、神秘的な雪景色、体に沁み渡る温泉など、冬の会津は魅力がいっぱい。この季節にしか見ることのできない、美しい景色を探しに出かけよう。

おとぎ話のような世界が広がる「大内宿」

まずは、南会津地方の山奥にひっそりと佇む大内宿へ。山間の小さなこの村は、400年前の町並みを今も残す宿場町。江戸時代には会津城下と下野国(現在の栃木県日光市)を結ぶ街道の要所として栄え、重要な役割を果たしていた。

街道沿いに約500メートルにわたって茅葺き屋根の家が建ち並ぶ光景は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されており、年間で多くの観光客が訪れる。

冬にはしんしんと雪が降り積もり、あたり一面には真っ白な世界が広がる。1軒1軒の民家では郷土料理を味わえる食事処や伝統工芸品のみやげ物店などが営まれているので、まずは一通り散策してみよう。

大内宿の名物「ねぎそば」は、ぜひ試してもらいたい一品。お蕎麦の上に乗った1本のネギを箸代わりにして食べるというなんとも奇妙な郷土料理だが、ネギの辛みと出汁の旨みがなかなかマッチしていておいしい。栃の実ともち米で作ったお餅「栃餅」、イワナの塩焼きなどを店先で買って、食べ歩きするのもおすすめ。

2月初旬の週末には、2日間だけ雪まつりが開催される。町なかに作られた雪灯籠や小さなかまくらは夜になると明かりが点り、光の粒がゆらゆらと揺れる様子は幻想的。昼間はそば食い競争や歌謡ショーなど、イベントが盛りだくさんだ。1日目の夜には花火も打ち上げられるので、お見逃しなく!

大内宿の詳しい記事はこちらへ!

城下町・会津若松で歴史散策

大内宿から車で30分ほど北に位置する会津若松は、鶴ヶ城を中心に広がる城下町。幕末には戊辰戦争の舞台となった町で、今も当時の歴史を物語る史跡が数多く残っている。

町のシンボルとして今も住民に愛されているのが、難攻不落といわれた鶴ヶ城こと会津若松城。幕末の戊辰戦争で新政府軍が攻めてきた際、1カ月もの籠城にも耐え忍んだ名城だ。2011年には45年ぶりに天守の屋根が葺き替えられ、幕末当時と同じ赤瓦の屋根が復活した。

内部では歴代藩主にまつわる展示物を見ることができ、一番上まで上ると会津の町を360度見渡せる。帰りには、見どころの一つである立派な石垣を見ながら茶室「麟閣」へ。ここは千利休とも深い関わりのある茶室で、和菓子付きのお抹茶をいただくことができる。時間があれば、日本庭園「御薬園」にも足を伸ばそう。

ちなみに鶴ヶ城では、毎年2月上旬に「会津絵ろうそくまつり」が開催される。天守閣の周辺には約1万本もの絵ろうそくが並び、幻想的な空間が創り出される。

会津若松城を観光した後は、会津の武家屋敷跡へ。会津藩松平譜代の家臣だった西郷頼母の邸宅は、豪華な和風建築。ケヤキやヒノキ、スギ材を用いた2400坪の広大な屋敷には生活調度品などが置かれており、当時の生活をうかがうことができる。冬季には期間限定で屋敷に上がって見学ができる、冬季公開も実施されている。

武家屋敷から徒歩10分ほど歩いた山中には、院内御廟と呼ばれる会津藩主松平家の墓所がある。2代藩主保科正経から9代藩主松平容保までが葬られている広大な墓所には立派な墓石が建てられ、漂う空気も神聖さを感じられるだろう。

さざえ堂

次は北の飯盛山へ。ここには、幕末の戊辰戦争で悲劇の運命をたどった白虎隊の記念館と、19士の墓がある。幕末における会津藩の歴史を語るうえでは欠かせないスポットだ。記念館には会津藩関連の資料や、新撰組の近藤勇に関連する資料なども展示されている。また、飯盛山の麓にある六角三層のお堂「さざえ堂」も必見。螺旋状に造られた二重構造の建築は世界的にも珍しく、国の重要文化財に指定されている。

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七日町通りで食べ歩き

白壁の蔵や格子戸の町家、石造りの洋館などレトロな景観を楽しめるのが、鶴ヶ城の北西に位置する七日町(なぬかまち)通り。江戸時代には城下の主要街道として、商家や料亭、宿などが建ち並ぶ繁華街だったそうだ。現在も大正〜昭和にかけて造られた建物をみやげ物店やカフェなどとして活用しており、散策やショッピングスポットとして人気を集めている。

おみやげを買うなら、会津地方の伝統工芸品がおすすめ。土蔵造りの「白木屋漆器店」は、創業約300年の老舗漆器店。食器や化粧箱のような高価なものからアクセサリーや雑貨まで、さまざまな漆塗りの商品を購入できる。

かわいらしい雑貨の品揃えで女性に人気なのが、会津木綿を使った雑貨店「もめん絲」。ブックカバーやポーチなど、色とりどりの木綿を使った商品はすべて手作りだ。会津木綿の布そのものを購入することもできる。

ほしばん絵ろうそく店」は、会津藩御用達だった老舗の絵ろうそく店。代々受け継がれてきた伝統の技で描かれた美しい絵ろうそくは、贈り物として人気だ。同店では絵付け体験も実施している。

大正レトロな雰囲気が漂う蔵造りの「長門屋」は和菓子店で、店内にはカフェが併設されている。鬼クルミを餡で包んだ奥州銘菓の「香木実(かぐのきのみ)」や起き上がり小法師をかたどったかわいらしい最中、絵柄を閉じ込めた羊羹など、同店オリジナルのかわいい和菓子はおみやげにおすすめ。散策に疲れたら、カフェスペースでゆっくりと一休みしよう。

囲炉裏を囲みながら会津の郷土料理・味噌田楽を味わえるのが、江戸時代の味噌蔵を改装した「満田屋」。自家製の生揚げ豆腐やまる餅、白米を半つぶしにしたしんごろう餅をはじめ、魚や野菜などに数種類の秘伝の味噌だれを塗って目の前の囲炉裏でじっくり焼いてくれる。出来立ての田楽は香ばしく、ため息が出るほどのおいしさで、どこか懐かしさを感じさせてくれる。店頭では各種味噌や漬物などの特産品も販売しているので、おみやげにどうぞ。

癒しの温泉宿へ

会津に来たら温泉は絶対に外せない。市街地にほど近いにもかかわらず、渓流沿いの自然を堪能できる会津の奥座敷・東山温泉は人気の高い温泉地だが、今回はもう一つの温泉地・芦ノ牧温泉をご紹介。

芦ノ牧温泉は、市街地から車で25分ほどの南の山間にある大自然の温泉地。断崖絶壁の渓谷にある小さな温泉地で、かつてはアクセスが悪く宿も2〜3軒ほどで「幻の温泉郷」といわれていた。現在は旅館やホテルが十数軒立ち並び、どの宿でも大自然の中で温泉を堪能できる。

雄大な渓谷美のど真ん中で露天風呂に浸かれるのが、旅館「渓山」。宿には岩風呂と檜風呂の2つの貸切露天風呂があり、眼前にはダイナミックな深い渓谷を望める。夏には新緑、秋には紅葉、冬には雪見と、四季折々の景観をぜいたくにも独り占めできるのが嬉しいところ。夜には頭上に満天の星が広がり、心にやすらぎを感じさせてくれるだろう。