世界一大きな樹木の原生林
セコイア・キングスキャニオン国立公園

世界一大きな樹木の原生林 <br/>セコイア・キングスキャニオン国立公園

カリフォルニア州の中部、ロサンゼルスから車で4時間ほどのところに位置するシエラネバダ山脈の南側には、隣接する二つの国立公園がある。セコイア国立公園と、キングスキャニオン国立公園だ。ここには、世界最大の巨木とされるジャイアント・セコイアの森が広がっている。

大きいものでは高さ90メートル、1200トン、樹齢3200年にもなる。天高く枝葉を伸ばす圧倒的なその姿は、今にも動き出しそうな巨人のよう。幻想の世界に入り込んだかのような不思議な気分が味わえる、この二つの国立公園の魅力を紹介する。

北米にしか生息しない巨木

ジャイアント・セコイアは、北米西海岸のシエラネバダ山脈西側でのみ生息している。この一帯は「セコイア・ベルト」と呼ばれており、生きていくのに適した最高の条件が揃っているのだ。標高は1520〜2290メートルの間、それ以上だと寒すぎ、それ以下だと乾燥しすぎてしまう。また、夏の間も適度な湿気が保たれる土壌が必要だ。さらにセコイア・ベルトの中でも限られたエリア、75の森でのみ、今もセコイアは成長を続けているのだ。

ジャイアント・セコイアは、よくレッドウッドと間違えられる。ジャイアント・セコイアは、正式にはセコイアデンドロン属、レッドウッドはセコイア・センパーバイレンツ属で、種類が異なる。幹が太くどっしりしているのがジャイアント・セコイア、背がより高くて細いのがレッドウッドだ。ちなみに、レッドウッドは北カリフォルニアの海岸線に生息する。

セコイアが生きていくために重要な役割を果たすのが、実は「火」だ。セコイアの木は傷つけられることで自分を癒し、成長する力を発揮する。また、火はセコイアの球果を開かせ、種を落とす役割も果たす。地上に折り重なった枝葉は種の受精を遮るが、火はこれを一掃して受精の手助けをする。さらに、苗を食う余計な虫や菌も火が殺してくれる。1960年代前半、山火事が鎮圧されたことによりセコイアの成長が止まってしまったことがあった。火がなければ、ジャイアント・セコイアは生きられないのだ。

近年は温暖化による気候の変化や大気汚染、人々が踏み入れることによる根のダメージなどで、彼らの生存が危機に脅かされている。私たちが自然に配慮し、どう生きていくかが彼らの運命を左右することになるだろう。

太古の息吹を感じる
ジャイアント・フォレスト

巨大なセコイアの存在感を実感したいなら、ジャイアント・フォレストでのハイキングがおすすめ。ここには約8000本ものジャイアント・セコイアが生い茂る森が広がっている。なかでも世界一大きな木「General Sherman Tree(シャーマン将軍の木)」は必見だ。

General Shermanは高さ83メートル、1256トン、樹齢2200年。もっと背が高い木や周囲が太い木はあるが、体積が世界でもっとも大きいのはこの木だといわれている。体積は1487立方メートル。9844回分のお風呂の水と同じ量が収まる大きさだ。地面に1番近い部分では、幹の直径が11メートル、周囲は33メートルもある。1番大きな枝が直径2メートル。見上げると、ネズミが180センチの人間を見ているのと同じぐらいの感覚になるそうだ。

General Shermanからは、いくつかのハイキングトレイルが枝分かれして伸びている。巨木の空間を楽しめるのが、Congress trail(コングレス・トレイル)だ。2〜3時間かけて歩くトレイル沿いには「The House」や「The President」など、名前のついたセコイアの木々が立ち並んでいる。何千年もの歳月を生きてきた木々の神聖な空間を歩いていると、身も心も洗われるような気持ちになってくるだろう。

The House

General Shermanから少し南へ行くと、ジャイアント・フォレスト博物館がある。ここはジャイアント・フォレストでのアクティビティの拠点で、周囲には多くのハイキングトレイルが設置されている。

時間に余裕があるなら、緑豊かな湿地が広がるCrescent Meadow(クレセント・メドウ)へと続くトレイルを歩いてみよう。清らかな空気が漂う森林を進んで行くと、日常から遠い世界に来たような気分を味わえる。また、湿地と博物館をつなぐクレセントメドウ・ロードの途中には、横倒しになった木をくり抜いて通れるようにしたTunnel Log(トンネル・ログ)や、ドーム型の岩山Moro Rock(モロ・ロック)などの見どころもある。

短時間の初心者向けハイキングを楽しみたいなら、博物館の向かい側から1時間ほどで回れるThe Big Tree Trail(ビッグツリー・トレイル)がいいだろう。

キングスキャニオンにある
世界で3番目に大きい木

セコイア国立公園から北西へ行くと、キングスキャニオン国立公園の敷地に入る。ここにはGeneral Grant Groveと呼ばれる森があり、世界で2番目に大きいといわれるGeneral Grant Tree(グラント将軍の木)を見られる。高さは約81メートル、地面に1番近い部分の幹は直径約8メートル。樹齢はおよそ3000年と考えられている。

周囲は30分ほどでめぐれるGeneral Grant Tree Trailとなっており、セコイア国立公園よりも人が少ないので、静かにのんびりとハイキングを楽しむことができるだろう。この辺りにはいろいろなハイキングトレイルが入り組んでいるので、時間があれば探検してみるといいだろう。

巨人が棲む森を彷彿とさせるセコイア・キングスキャニオン国立公園。ここに来て、自然の偉大さと重要性に気づかない人はいない。悠久の時を生きてきた巨木たちは、儚い一生を終える私たちに、何を伝えてくれているのだろう。