岩が織りなす大自然のアート ヨセミテ国立公園

岩が織りなす大自然のアート ヨセミテ国立公園

カリフォルニア州の中央に位置するヨセミテ国立公園は、アメリカの中でも人気の高い国立公園としてよく知られている。サンフランシスコから車で約4時間、ロサンゼルスからは約6時間と、都市からアクセスしやすい大自然スポットとして毎年多くの観光客が訪れる。アメリカで2番目に国立公園に指定され、世界遺産にも登録されているヨセミテの魅力とは――。

氷河の浸食によってできた大自然のアート

現在のヨセミテのユニークな景観は、数十万年もの間に積み重なった氷河活動と浸食によって作り上げられた。この土地一帯を覆っているのは花崗岩。長年の浸食によって、断崖のように切り立った岩山やドーム状の岩、U字の谷、豊富な雪解け水が作り出す圧倒的な滝や湖、広大なセコイアの森など、多様な景観美が広がっている。

ヨセミテ国立公園の広さは約3000平方キロメートル。東京の1.5倍もの敷地があり、その95パーセントは手つかずの自然が保存されている。ここは、約90種の哺乳類、150種以上の鳥類、約1500種もの植物が生息する、まさに生き物の楽園といえる場所なのだ。

大迫力の岩の芸術

ヨセミテ・バレーが位置するエリアは、ヨセミテ国立公園でもっとも人気の高い観光スポット。このエリアでは、雄大な景色と岩が織りなす自然のアートを見ることができる。

エル・キャピタン(El Capitan)

エントランスに近い場所にそびえ立つのは、エル・キャピタンと呼ばれる切り立った巨大な岩山。高さ約1095メートルもあるこの岩は、世界最大の花崗岩の一枚岩といわれている。地面と垂直に立つ岩山の存在感は圧倒的で、世界中のロッククライマーにとって憧れの的だ。

実際に、このエルキャピタンの写真の中腹あたりにも目を凝らして見るとクライマーがいるのが分かるだろうか。彼らは2日間かけて岩山の頂上まで登り切るのだそう。エルキャピタンの麓周辺では、その様子を見ようと望遠鏡を立てている人が多数集まる。

ハーフドーム(Half Dome)

ヨセミテ・バレーの奥に位置するハーフドームは、その名の通りドーム状の岩が真っ二つに割れたような半円状の岩山。氷河に削られてこの形が出来上がったのだという。標高は、約2695メートル。

このハーフドーム、通常はビューポイントからその美しい姿を眺める人が多いが、トレッキングで上まで登ることもできる。ただし、景観を守るために登れるのは1日300人と決まっており、抽選で発行される許可書が必要となる。往復約12時間のルートはハードだが、頂上まで登れば得がたい経験ができることは間違いない。

トンネル・ビューからの景色

これらの景観美はヨセミテ・バレーのあちこちから見ることができるが、特におすすめなのが、トンネル・ビューとグレイシャー・ポイント。グレイシャー・ポイントへと続く道の途中にあるトンネル・ビューは、これらの景色をまとめて眺められる必見スポット。右にはブライダルベール滝、左にはエル・キャピタン、そして中央の奥にはハーフドームを望める。

グレイシャー・ポイントからの眺め

トンネル・ビューを通り過ぎ、さらに登って行くとグレイシャー・ポイントへとたどり着く。約980メートルの高さに位置し、眼前にはそびえ立つハーフドームを、その脇にはネバダ滝やヴァーナル滝を見ることができる。ヨセミテ・バレーを一望でき、サンセットの鑑賞スポットとしても人気だ。

春は雪解け水の宝庫

冬の間雪に包まれるヨセミテ国立公園は、春になると莫大な雪解け水のヴェールに覆われる。そこかしこに水が満ち溢れ、迫力満点の滝や豊富な水量の湖が美しい景色を見せてくれる。

ヨセミテ滝(Yosemite Falls)

ヨセミテ国立公園のシンボルとなっているヨセミテ滝は、全体の落差が739メートルと、北アメリカで一番の高さを誇る。春の雪解けとともに流れ出し、夏には水量が減って秋には枯れてしまうので、この滝を見たいなら春に訪れることが必須だ。

アッパーフォール、ロウアーフォール、その間にあるカスケードの3段の滝からなり、ロウアーフォールはもっともアクセスしやすい滝。往復30分ほどのハイキングトレイルで滝の真下にアクセスすることができる。周囲には小川が流れ、木々の隙間から滝が流れる美しい風景を見ることも可能だ。

体力に自信のある人は、アッパーフォールの頂上まで登れるハイキングトレイルに挑戦してみるのもいいだろう。ただし、このトレイルは高低差が激しく険しい山道を登ることになるので、登山に自信がない人にはおすすめしない。頂上からはアッパフォールが流れ落ちる様子を間近に見ることができ、その様子は圧巻だ。

ブライダルヴェール滝(Bridal Veil Falls)

トンネル・ビューの手前にある、高さ188メートルの滝。風が吹くと滝のしぶきが霧状になり、花嫁のヴェールのように見えることからこの名が付いたのだそう。運が良ければ霧の中に浮かぶ虹が見られるかもしれない。この滝も、往復30分ほどの軽いハイキングトレイルをたどって真下までアクセスできる。ちなみに、この滝のしぶきを浴びると女性は近々結婚できるという噂もあるそうだ。

水量の多い時期に国立公園内の滝を訪れると、近づくにつれて雨のように頭上から大粒のしぶきが降り注ぐ。その様子は、まるで天が春の訪れを祝福しているかのよう。水の恵みがこんなに喜ばしいことなのだと、心から実感できるだろう。

ミラーレイク(Mirror Lake)

ヨセミテバレーの奥まった部分に位置するミラーレイクは、ハイキングにおすすめのスポット。風のない日に訪れると周囲の景色が鏡のように湖に映ることから、この名前がつけられたそうだ。

この辺り一帯は木々に覆われており、歩いているだけでマイナスイオンを感じて癒されるはず。湖の周囲にはハイキングトレイルが敷かれており、約2時間かけてゆっくりとめぐることもできる。道のりは険しくないので、ハイキングに慣れていない人やこどもも気軽に歩けるだろう。湖に映り込んだ景色は美しく、一見の価値ありだ。

高山地帯や巨大な樹木など、見どころは多数

もっとも観光客の多いヨセミテ・バレーも楽しいが、もっと静かに自然を楽しみたいなら、北側に位置するトゥオルミ・ミドウ(Tuolumne Meadows)もおすすめ。ここは夏の間だけオープンする草原地域で、歩きながら色とりどりの高山植物を楽しむことができる。ハイキングトレイルが無数にあり、ヨセミテでもっとも美しいといわれるテナヤ湖も近い。

また、ヨセミテ・バレーの南側にはジャイアント・セコイアが立ち並ぶ森林地帯マリポサ・グローブがある。この森でもっとも大きいグリズリー・ジャイアントという名のセコイアは必見だ。根元の直径が約10メートル、周囲が約29メートル、高さが約63メートルもあり、樹齢は2700年といわれている。かつては馬車の通り道として穴を開けられたカリフォルニア・トンネル・ツリーと呼ばれるセコイアもあり、見どころは尽きない。

自然の恵みを肌で感じよう

一帯にはミュールジカやクロクマ、ピューマ、テンなどの野生動物が生息し、多様な動植物層が息づいている。この場所でしか見られないユニークな自然美をゆっくりと楽しみたいなら、3〜5日の滞在プランを立てることをおすすめする。