ナバホのガイドとめぐる
モニュメント・バレーのミステリーツアー

ナバホのガイドとめぐる <br/>モニュメント・バレーのミステリーツアー

ユタ州の南部からアリゾナ州の北部にかけて広がるモニュメント・バレーでは、浸食によって形作られた奇岩が織りなす大自然のアートが見られる。長い年月をかけて形作られたこの不思議な荒野は、アメリカ先住民の定住の地でもある。ここは現在もナバホ族の居住区であり、連綿と受け継がれてきた彼らの伝統と文化を守る聖なる地域だ。

モニュメント・バレーの南側には、一般車両では入ることのできないミステリー・バレーと呼ばれるエリアがある。ここは、はるか昔に古代先住民が生活を営んでいた軌跡の残る場所。この神聖な区域を保護するため、ナバホの人々によるガイドでしか入ることができないようになっている。

謎に包まれた先住民の居住区

ナバホ族がこの地に住み始めたのは、少なくとも500年ほど前から。しかし、彼らがここに定住するようになるもっと前に、この地で生活していた民族がいる。それが、古代の先住民族とされるアナサジ族だ。彼らはここで住居を構え、狩猟生活を行なっていたが、ある瞬間から突如としてこの地から消え去ってしまった。なぜこの地を去ったのか、どこへ行ったのかは今も謎に包まれている。

ナバホ族を始はじめ、先住民族はもともと文字を持たず、歴史は口承でのみ伝えられてきた。そのため、彼らの歴史には不明な点が多い。同じくこの周辺に住む先住民族に、ホピ族という種族がいる。アナサジ族が残していった壁画や陶器の模様の特徴がホピ族のものと似ていることから、アナサジ族はホピ族に姿を変えたのではないかという説もあるが、明確なことは分かっていない。

アナサジ族が残した遺跡をめぐる

ミステリー・バレーには、アナサジ族が暮らしていたことを示す証がいくつも残っている。その一つひとつを、ナバホのガイドがていねいに説明しながら案内してくれる。

ツアーでは、スカル・アーチやハネムーン・アーチなど、浸食によって作られたアーチがユニークな景観を作り出している奇岩が見られる。この辺りは何億年もはるか昔、海の底に位置していた。それが地殻変動で隆起し、その後、雨風に晒されて長い年月をかけて浸食を繰り返し、現在のようなユニークな岩山が屹立する光景へと変化していった。

ミステリー・バレーの1番の見どころは、アナサジ族が暮らしていた居住跡だ。赤い岩山の斜面には、レンガで作られた小さな居住跡があちこちに点在している。これらの居住跡には、穀物を保存していたと考えられる倉庫や料理をしていたと思われる台所が今も残っている。居住跡に共通しているのは、どれも地上から少し高い岩山の斜面に築かれているということ。かつて、この辺りには敵となる民族はいなかったと考えられている。彼らは現在よりもはるかに身長が小さかったため、猛獣たちから身を守るために、このような斜面にあえて家を作っていたそうだ。

居住跡の周辺には、必ずといっていいほどペトログリフが残されている。ペトログリフとは、壁に刻まれた絵や印のことだ。文字を持たなかった先住民たちは、絵や特定のマークを壁に刻むことで、互いの意思を伝え合っていた。岩壁には、ヤギや鳥のような動物の絵、こどもの足形、不思議な模様など、さまざまなペトログリフが刻まれている。

この中で印象に残っているのが、手形のペトログリフだ。手形のペトログリフは、その住居の住人が家を永遠に去る際に残す印なのだそうだ。ミステリー・バレーでもっとも大きい居住跡には、無数の手形が壁いっぱいに残っている場所がある。これは、一帯に住んでいたアナサジ族が、一斉にこの地を去る際に記していったものと考えられているのだそうだ。

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古代先住民族が残していった遺跡をめぐりながら、ツアーガイドはこの辺りの奇岩の成り立ちや先住民の歴史、彼らの宗教的な考え方などについて、興味深いストーリーを話してくれる。ガイドの話を聞いていると、この地球がすべてつながっていることを実感する。

最後には、ミステリー・バレーを一望できる丘の上の撮影スポットを訪れて、ツアーは終了だ。

昼間のツアーも十分楽しめるが、日の出や日の入りの時間帯に開催されるツアーに参加すれば、奇岩が真っ赤に染まった絶景が見られる。神秘的な景色を眺めながらガイドが話してくれるストーリーに耳を傾けていると、まるで異次元に訪れたような不思議な体験ができるだろう。

モニュメント・バレーでは、さまざまなツアー会社がそれぞれに異なるユニークなツアーを開催している。ツアーによって、訪れるスポットもガイドが教えてくれる話も異なる。所要時間や目的に合わせて、好みのツアーを選んで参加してみよう。ほかでは経験できない、貴重な体験ができること間違いなしだ。